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時計修理技術者コラムVol.14 ダイバーズウォッチの特殊構造~ロレックス シードゥエラー編~

時計修理技術者コラムVol.14 ダイバーズウォッチの特殊構造~ロレックス シードゥエラー編~

ダイバーズウォッチ(防水時計)の特殊構造について

機械式時計の防水技術が高まるにつれて、ダイバーズウォッチの時計ケースにも特殊な構造が搭載されるようになりました。その一つがヘリウムガスエスケープメントバルブ(ヘリウム排出バルブ)です。今回はロレックスのシードゥエラー(Ref.16600/116600)を例に役割と構造をご紹介させていただきます。

ヘリウムガスエスケープバルブの役割

飽和潜水は非常に高い水圧下での活動となります。その際に高分圧の窒素を摂取することで窒素中毒を引き起こす危険性があるため、酸素とヘリウムの混合ガスを使用することが多い。
ヘリウムは密度(分子)が小さいため、高水圧下での呼吸抵抗の低減に役立ちますが、その分子の小ささゆえに、高性能のダイバーズウォッチでも内部に侵入してしまいます。
圧力が高いヘリウムガスが充満したままで低水圧(気圧)下に戻ると、ケース内外の気圧差で時計が破損する(ガラスが外れる)恐れがあります。
そういった破損を避けるために、内部に混入したヘリウムガスを逃がす役割をしているのがヘリウムエスケープバルブです。

ヘリウムガスエスケープバルブの構造

バルブバルブ分解1

ロレックス/シードゥエラー/16600 ヘリウムガスエスケープバルブ(前)、分解(後)
ヘリウムガスエスケープバルブは普段使用している際(大気圏使用時)は、ケースとバルブ間のパッキンが密着し、生活水を遮断しています。また、深海では水圧を利用し、内蔵されているスプリングがバルブを押し、防水性を保つ仕組みになっています。このバルブの構造は1967年にロレックスが開発し、特許を取得しています。

ダイバーズウォッチの落とし穴

ヘリウムガスの排出を目的として堅牢なオイスターケースにバルブを取り付け、パッキンで防水をしているため、パッキンが劣化し断裂等を起こした場合はバルブから浸水してしまう恐れがあります。時計修理専門店WATCH COMPANYでは、オーバーホールの際にバルブを完全に分解してバルブ周りに付着した汚れやごみを除去するだけではなく、劣化したパッキンの交換も行っております。

劣化したパッキンbefore arrow 新品パッキンafter
汚れやごみが付着したバルブbefore arrow 洗浄後のバルブafter
傷ついたバルブbefore arrow サンドブラストを施したバルブafter

バルブ分解2

ダイバーズウォッチの防水性は非常に素晴らしい反面、特殊構造部分のケアを怠ると水入りなどのトラブルに遭う恐れがあるため、定期的なメンテナンスをお勧めいたします。

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